作家の日記


作家の日記は、紛れもなく「文学」ですよね。
けれど、はじめから世の中の人の目に触れることがわかって書かれる作品とは違い、
あまりにも私的なことを語る日記は、その存在自体がよくわかっていません。
書いていたとしても、本人の希望で、亡くなった後処分されていたり、あるいはどこか
部屋の片隅でひっそり眠っているのかもしれません。
運良く生き残った日記から
は、どんな声が聞こえてくるのでしょう・・・。




〈日本の作家〉
石川 啄木
『啄木・ローマ字日記』
(明治19〜明治45) 岩手県生れの代表的詩人。17歳で上京。肺結核のため、27歳で没。代表作に『一握の砂』『悲しき玩具』等。
夏目 漱石
『漱石日記』
(慶応3〜大正5) 東京生れ。東大卒業後、松山中学、熊本五校で英語を教え、イギリスに留学。帰国後、大学に辞表を出し、朝日新聞社に入社。
代表作に『坊ちゃん』「それから』『我輩は猫である』等。
正岡 子規
『病床六尺』『仰臥漫録』
(慶応3〜明治35) 愛媛県松山市生れ。東大国文科中退。近代俳句の改革運動を起こす。後年、結核性カリエスを患い、寝たきりとなった病床から日々の暮らしをつづり、新聞に連載される。
句集『寒山落木』等。
高見 順
『敗戦日記』『闘病日記』
(明治40〜昭和40) 福井県三国町生れ。東大英文科卒業後、会社勤務の傍ら小説を発表。第一回芥川賞候補になる。『闘病日記』は昭和38年にガンを宣告され病床でつづったもの。
代表作『いやな感じ』等。


〈海外の作家〉
                                   
L.M.モンゴメリ
『モンゴメリ日記』
(1874〜1942) 「赤毛のアン」シリーズを生んだカナダの代表的女性作家。
フィクションでアンが理想の家庭を築きあげていったのに対し、現実の生活では、夫の精神病、子どもの問題、戦争のことなど、心労が絶えなかったようである。死後50年以上が経ち、彼女が残した日誌の大部分が明らかになりつつある。
アンネ・フランク
『アンネの日記』
(1929〜1945) ユダヤ人少女。第二次大戦中、ナチを逃れ、父オットーが作った隠れ家に住む。そこでの生活を13歳の誕生日である1942.6.1〜44.8.1まで綴った日記。
この3日後に、隠れ家はゲシュタボに見つかり、逮捕され、翌年3月に強制収容所で死亡。
日記発見から出版に至るまでの経緯が、「『アンネの日記』もう一つの真実」(平凡社)に書かれている。
ヴァージニア・ウルフ
『ヴァージニア・ウルフ日記』
(1882〜1941) イギリス、ロンドン生れ。1912年、レナード・ウルフと結婚し、夫妻でホガース出版社を経営し、自身の作品を出版。
代表作『ダロウェイ夫人』『燈台へ』など、「意識の流れ」の手法を用いた作品を発表。
1941年 入水自殺。


〈その他の日記〉  
高野 悦子
『二十歳の原点』
(昭和24〜昭和44) 栃木県生れ。立命館大学文学部在学中に、学園紛争に遭遇。
鉄道自殺。
山田 花子
『自殺直前日記』
(1968〜1992) 漫画家。高層住宅から飛び降り自殺。24年の生涯を終える。
死の前日まで記していた日記。